涙を流すのは心が泣くからです

記憶が泣くからです

その日のまえに

割り切れない艱難辛苦のドラマが

あるから泣くのです



涙は目から流れます

鼻からも口からも肌からも

全身から流れます

鏡に映った傷だらけの自分を見て

傷を埋めるために泣くのです



涙はさんずいに戻ると書きます

一生に一度の別れの涙、不在の涙は

涙が枯れるまでえんえんと泣くのです

カタルシス、水に流して元に戻るよう

精神を浄化するために泣くのです



涙は自分の器の大きさです

ガーンときたとき

真実に触れたとき

自分の器を越えてあふれ出たとき

圧倒されて泣くのです



涙は優しさのアピールではありません

泣ける自分に陶酔し

みんなが泣くから涙して

感情を他人任せにする安い涙は

ファシズムの匂いがして危険です



涙は一人ひとりの尊厳です

涙を流すのはよほどのことです

一番大切なかけがえのないものです

絶対に忘れられない特別な何かを

自分の心に刻むために泣くのです





※「涙の理由」重松清 茂木健一郎 対談(Takarajima Books )を読んで







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