海で溺れたものは
二度と海に行きたがらない
そんな彼をふたたび
海へ連れ出すには
力づくでは抵抗するから
札束でもチラつかせようか
きっといくら積まれても
無理なものは無理と
アレルギー反応を示すだろう
ならば無人島に放置するぞと
溺れる以上の恐怖を煽り
二者択一を迫ろうか
それとも
凄い美人を紹介するぞと
恐怖以上の悦びの
ニンジンをぶら下げようか
そうすればさすがに
海で泳ぐことを決心するだろう
もしきみが
まっとうな人間で
暴力にも金にも脅迫にも
そして性欲にさえ
訴えられないのなら
優しく優しく海へ誘うしかない
遠浅の竹富島へ連れていけば
溺れる恐怖など感じることなく
白い星砂と美ら海が好きになる
遠浅の波左間へ連れていけば
穏やかな海にぷかぷか浮いて
きっと波乗りが好きになる
海で溺れたものは
二度と海には行きたがらない
が、海のことが好きならば
懲りずに海に行くだろう
危ないから行かない方がいいと
止めてもきっと海へ行くだろう
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遠くで眺めるのだろう
白く広がり透明に湿る浜を
一人で歩くのだろう
淡く染まる日暮れに歩くだろう
金色に浮かぶ月を眺めるだろう
砂浜に座る君を探しにいくのだろう
少年のような半ズボンで
星を仰ぎ見る君に逢いにいくのだろう